(50音順 敬称略)
人生を振り返りながら、「山坂はあるんだけど、らいに負けてなんていませんよ」。新元号になるからといって「世の中はかわらない」。そう語るかづゑさんの姿が小粋で爽快。なんて魅力的で豊かな人なんだろうと思いました。家庭の散文的な温かみも映し出されるなか、かづゑさんはかつての絶望を振り返り「人がこわい」とも言います。人間の恐ろしさ。夫や母との深い愛情の繫り。紛争に明け暮れる現代人に、言葉以上に多くのことを、かづゑさんは語りかけてくれます。
阿部 海太郎
(作曲家)
何度も笑って、泣いた。そして「すげぇ…」と唸った。かづゑさんの壮絶な人生と夫婦の愛の物語は、とてつもない人間賛歌である。何より、記録としての価値の高さが半端じゃない。同じ作り手の一人として、熊谷博子監督が放った豪速球が、ずしんと胸に響いた。
大島 新
(ドキュメンタリー監督)
歳を重ねて涙腺が弱くなった。映画でよく泣く。だが、あったかい涙を流すことは稀有だ。宮崎かづゑさんの何気ない言葉、懸命な動作に接して、勇気を与えられ、励まされ、喜びでいっぱいになった。頬を伝い流れてきた涙はあったかかった。かづゑさんは向かっている。ハンセン病の彼方へ。差別の中でさらに差別された者の彼方へ。
金平 茂紀
(ジャーナリスト)
どんな逆境でも、輝いて生きている人びとがいる。この映画の主人公、元ハンセン病患者の宮﨑かづゑさんが切り拓いた人生は見事だ。
見終わると「自分も元気に行こう」と足取りに力が入っている。
鎌田 慧
(ルポライター)
かつてハンセン病者が激しい差別を受けていたことも、1996年にようやく「らい予防法」が廃止されたことも、瀬戸内の島に療養所があることも知っていた。だけど、そこで暮らす人たちの生活は? 宮﨑かづゑさんは知的でおしゃれな、しゃんとした人である。島の美しい自然とそこでの人生。「ちゃんと生きたと思う。どうでしょうか」と語るかづゑさんの言葉に、あなたは大きな励ましを得るだろう。
斎藤 美奈子
(文芸評論家)
映画を観たその衝撃がなかなか消えない。かつて『お召し列車』という劇で、ハンセン病罹患者のための唯一の定時制高校、新良田(にいらだ)教室にまつわる物語を描いた。『かづゑ的』には、かづゑさんたちが住んだ新良田浜の鮮やかな海の風景が、ふんだんに出てくる。瀬戸内は、外洋に比べると海の透明度は低いが、この穏やかさ、包容力は内海ならではで、かづゑさんの魅力、その温かさ、厳しい現実に立ち向かう決意と誇り高さも、この海で育まれた。ラストシーンのかづゑさんの台詞は、劇作家には、書けない。
坂手 洋二
(劇作家)
かづゑさんは生活を大事に生きてきたひとりの女性であり、強烈な芸術家である。
ことば、絵、存在そのものに、私はとりこになってしまった。
岡山に引っ越して10年。長島愛生園でかづゑさんと出会えたことは、神さまからの贈り物。
なーんていうと、「私を持ち上げないで!」というにきまっている。
油断ならない。愛らしく、おそろしい人である。
そんなかづゑさんに、映画で出会ってほしい。
沢 知恵
(歌手)
苦難は人を押し潰すこともあれば、強くすることもある。
かづゑさんは断然、後者であろう。
想像を絶する苦難に耐えた結果、無敵とも言えるほど強い人になられたのだと思う。
かづゑさんは長島を「天国だし地獄だし」と表現された。
僕は生きることは天国だし地獄なのではないかと思った。
この映画には、生きることが映っていた
想田 和弘
(映画作家)
深く酷しい差別という溝を、時(トキ)もゆっくり流れていくのでしょう。
熊谷監督のやさしい目は、この映画を観る人の心のやさしさになって、
ゆっくりとかづゑさんの悲しみと寄り添ってゆきます。
田島 征三
(絵本作家・美術家)
「らい」を生き抜くとは?
すべてを見てほしいと
カメラが許可された入浴シーン
かづゑさんのたくましい
太ももが全てを語っていた。
記録者と被写体の、
間違いなく幸せな出会いだ。
寺尾 紗穂
(音楽家・文筆家)
「長い道」「私は一本の木」かづゑさんの本は、わたしの書棚に並んでいる。
苦しみも涙も、生きる力に変えてきたかづゑさん。
その原動力は愛。本作を観たあと、かづゑさんへの愛はさらに深まった。
中江 有里
(俳優・作家・歌手)
風が吹き、葉がそよぎ、波が打ち寄せる島で、かづゑさんと熊谷監督の覚悟が共鳴しあい、宝物のような作品が生まれました。それを夫の孝行さんが支えました。人生、幸せ、天国、地獄・・・、かづゑさんがその言葉を口にする時、確かにそれはこの世に存在するように思えてきます。かづゑ的、チャーミングで誇り高き人生に涙します。
永田 浩三
(武蔵大学教授・ジャーナリスト)
「かづゑ的」ヒロインのかづゑさん、この人の発する言葉のセンスの抜群の良さに心底、驚嘆した。「らい病」という過酷な人生が言葉のセンスを磨いたのだろうか!
言葉を自在に操ることで、かづゑさんは自由を獲得して生きてきたんだなあ、と、その清々しさに胸が熱くなる。
原 一男
(映画監督)
カメラは全編を通して過酷な「らい患者」の日常を追っているが、どこまでも力強く清々しい。これは半世紀以上連れ添った夫・孝行さんとの美しくも微笑ましい夫婦愛の映画でもある。観ているうちにかづゑさんがハンディキャップを持つ人だということさえ、すっかり忘れてしまうほどで、これこそ熊谷監督にしか撮れない作品だと思った。
松井 久子
(映画監督・作家)
涙と笑い。天国と地獄。
ハンセン病回復者の心情がリアルに伝わり、胸を打たれる。
艱難辛苦の極限を生きたかづゑさんと家族。8年間の撮影を通じ、心の奥底に秘めた思いが吐露される。これまでほとんど伝えられなかった思いだが、かづゑさんの言葉に私たちも励まされる。深みと迫力ある力作!
三宅 民夫
(フリーアナウンサー)
見ごたえのある、いろいろな面で考えさせられる映画だと思いました。
孤高のかづゑさんの生き方は元ハンセン病患者ということを超えて、凄いと思いましたし、生きにくい世の中で信念を通して生きることの美しさを感じました。
宮崎 信恵
(映画監督)
誰もが知っている曲である「ふるさと」は彼女にとってつらい曲。言われて思う。それはそうだ。全身で喜びと悲しみを表すかづゑさんに熊谷監督は出会った。個を撮りながら普遍を示す。その結晶を僕たちは目撃する。
森 達也
(映画監督・作家)
『かづゑ的』を観てから、かづゑさんの表情、声に取りつかれたままです。あらゆるくびきから解き放たれた人間の存在感にひたすら打たれました。それは、かづゑさんが「らい病」になって以来、獲得してきた自由ではありますが、そうした経験をたどらなくても、人間は自由になれるという可能性を示されたような気がします。
山川 建夫
(フリーアナウンサー)
常人には想像もできない辛さも酷さも、呑み込んでしまう子どものようなかづゑさんの率直さと明るさに勇気をいただきました。すべてを語るかづゑさんの指を失った手が忘れられません。
渡辺 美佐子
(女優)